【明浄正直】(みょうじょうせいちょく)或いは、
【浄明正直】(じょうみょうせいちょく)とお読みします。
神道に於ける人の心のあるべき倫理観を表した言葉でございます。
祝詞でも「明(あけ)き、浄(きよ)き、正(ただ)しき、直(なお)き真(まこと)の心・・・」とお申し上げする事もございます。
清浄で明るく、正しい素直な誠の心。という意味ですね。
また、神職の階位としても用いられ下から、
直階(ちょっかい)
権正階(ごんせいかい)
正階(せいかい)
明階(めいかい)
浄階(じょうかい)
と上がって行きます。
さて、日本語がまだ不慣れで、自分自身の言葉での謝罪が難しい・・・
と言うお相手に対して、ではこちらで「誓約書」という形で文章を用意しますので、
これをじっくりと読んで意味を理解された上で、署名・捺印をして提出して下さい。
それを以って、反省・謝罪の意思を確認させて頂きます。
・・・という訳で、以下の「誓約書」を作成し、相手側の保険担当者へと託したのであります。
宗教法人 高知八幡宮
権禰宜 ○○ ○○ 殿
誓約書
私は、令和4年2月15日の午後12時50分頃、○○市○○町の「○○食堂」がある交差点に於いて発生した事故につきまして、全面的に過失を認め且つ被害者やその他関係者に対し、虚偽の証言を行い困惑させた事を反省し、謝罪する事を誓約いたします。
令和4年 月 日 作成
住所
氏名
印
相手の方が認め、反省すべき事はここに集約されています。
逆に言えば、この点を認めない限りは今回のこの事故についての問題は、解決には至らない。という事になります。
平身低頭(へいしんていとう)
「過(あやま)ちては則(すなわ)ち改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」の意識が在れば、
文字通り、平身低頭に。
理解し、認め、反省して、署名・捺印をして速やかに提出して頂き、滞る事無く解決にまで進める事が “ 誠意 ” というものでございますが・・・
しかし残念ながら、ここからがまた更に時間を要するのでありました。
相手側にこの「誓約書」が届いたであろう頃の夕方、突然、私のスマホに見知らぬ番号から着信が・・・
出ると、またもや相手の旦那さん。
「突然のお電話、失礼します。」という言葉からはじまり、ひとしきり謝罪の文言を述べられた後、
「全て言い訳にはなってしまうのですが。」と前置きをされてから、
「どうしても、誓約書の文章の中の “ 虚偽の証言を行い ” という部分が受け入れ難い。」
という事と、
「まずは直接お会いして、謝罪をさせてほしい。」
という内容のお話をされておりました。
(う〜ん・・・平身低頭どころか、要求をされてしまいました💦)
(ちょっと待ってくださいね。物事には順序というものがございますので・・・)
(ちゃんと過ちを認めてからの、謝罪ですよ?)
「いやいや、ちょっと落ち着きなさいよ。」と、
「あなた、先ほどから要求しかしていませんよ。」
「じゃあ、分かりました。文章の表現を少し見直してみますから。」
では、これならよかろうと「虚偽の証言」という部分を「誤った内容の証言」へと変更し、
今度はこちらが返信用の封筒まで付けて、返信期日まで設けて、改めて郵送したのであります。
それから約4日後、返信期日の当日になってようやく、保険担当者から電話が入り、
「会社への手紙はいったん全て本社へと送られる為、手元に届いたのが今日だ。」
「これから契約者に会って、改定された誓約書を渡す。」と言うのです。
(この保険会社はとにかくフットワークが鈍い。そしてレスポンスが遅い。)
そして、待つこと更に2日後・・・
驚く事に、今度は「こちらが謝罪文を作成するので、その内容を確認してほしい。」
と言うのです。
( “ 誓約書 ” は、どーしても嫌だったようです。)
(この期に及んでも体裁を気にされているご様子。)
どこまでいっても【明浄正直】の精神とはズレてしまっている・・・。
そう。 相反しているのではなく、 “ ズレてしまっている ” のです。
一見、謝罪しているように感じますが、反省すべき部分が違っている。
先ずは認めて、変わらなければならない。
それが反省です。
体裁や体面を気にしている場合では無いのです。
しかしまぁ、とは言え、わかりますよ・・・。
自分の犯した過ちを認め、変わるには相当の胆力が必要です。
すぐには受け入れ難い。というのも理解できます。
ただ、そういう “ 山 ” ばかりではない “ 谷 ” の部分も含めて「人生」なのです。
そういった闇の部分、影の部分も受け入れなければ、この現世(うつしよ)を生きる。という事にはならないのであります。
『神主の体験』その⑭ ~ 中今を生きる ~ へと続きます・・・